HUNGARIAN WINES
ハンガリーワイン

歴史

 ハンガリーのワインの歴史は、紀元前に古代ローマ人によってブドウ栽培が伝えられたところから始まり、5世紀頃には広大なブドウ園が切り開かれていると記録にあります。 10世紀のペルシャ人探検家および地理学者として知られるイブン・ルスタによると、ハンガリー人のワイン造りの知識は東より伝わり、カルパチア盆地征服(892-907)より以前からすでに醸造などの技術は広まっていました。

 さらに、その後数世紀に渡りフランスやイタリアから新しいブドウ品種もハンガリーには入ってきましたが、その頃のワインはほぼ全て白ワインでした。 後にビカヴェール(雄牛の血)として知られるハンガリーの代表的な赤ワインができるのはオスマン帝国占領時代(1541-1699)でした。 また、同時期にトカイ地方では甘いデザートワインが有名になりました。

 ハンガリーの貴腐ワインは、1571年の文書にはフランスの王、ルイ14世に「王のワインにして、ワインの王」と称賛されたワインとしても記述があります。 1699年、オスマン帝国がハンガリーをオーストリアに割譲した後は、ドイツの影響によりブラウアー・ポルトギーザーなどのブドウ品種が広まりました。
 その頃トカイでは、世界初のブドウ畑の格付けが、土壌や傾斜、貴腐傾向に基づき行われました。 1882年からフィロキセラの被害はハンガリーを激しく襲い、トカイとエゲルの多くの伝統的な農園は、ブレンドワインからしばしば単一栽培に置き換えられました。
それまでハンガリーはフランス、イタリアに次ぐ世界第3位のワイン生産国で、生産量は400~500万hlでしたが、80万hlまで減少してしまいました。

 その後、徐々にワイン産業を回復させ、戦争と支配にも関わらず1938年〜1948年でハンガリーワインは飛躍を遂げるのですが、ソビエトの支配によりハンガリーワインのインフラと市場は潰され、さらには政治的失敗により40万haものハンガリーの歴史的なブドウ畑は消滅してしまいました。
 1980年代、ソビエトの支配は終わり、民主化が進んだハンガリーでは再びワインの生産が息を吹き返し、技術の進歩により非常に質の高いワインが造られるようになりました。

 2004にはEUに加盟し、ヨーロッパ各国からもハンガリーワインは注目されるようになります。 それから現代に至るまでハンガリー人はワイン造りに対して情熱的で、日々より良いワインを生産しています。 歴史こそ古いハンガリーのワインですが、様々な時代を経てワイン造りの知識や伝統を受け継ぎ、今の新しいハンガリーワインがあります。

 皆さんも一度飲んでみてはいかがですか?

気候風土

 ハンガリーは典型的な大陸性気候で、日本と同じように四季があります。
夏と冬の気温差はかなり大きく、夏の平均気温は22℃くらいですが、35℃を超える猛暑もあります。冬の寒さは厳しく、1月、2月の最低気温はマイナス10℃近くになることもあります。

 年間を通しての南部の産地の気温は約10℃〜11.5℃、北部の産地で約9.5℃〜10℃あります。日照時間は10℃以上の日が185日〜200日。
ハンガリーワインの産地の緯度は北緯45.5度〜48.5度と、北海道より少し北にあたり、南部はピエモンテやボルドー、北部はブルゴーニュなどと緯度が同じになります。

 標高は100〜300mと低め。(唯一の例外としてトカイ地方に513mの山) 年間の平均降雨量は700mmで少なく、ヨーロッパでは雨季とされる秋から冬にかけてもジメジメした感じはしません。
特に南部では年間を通して乾燥した年が多いです。

産地

 1956年にはハンガリーでもフランスのアペラシオン・コントローレと同様にワイン法を制定し、14の生産地区に分類して原産地の品質を保証してきました。
国の自由化後の1994年9月15日には20に分離、続いて1997年の改正ワイン法により22の指定地域に分類され、現在に至ります。

主なブドウ品種

※生産量順
白ブドウ 黒ブドウ
ビアンカ ケークフランコシュ(ブラウフレンキッシュ)
チェルセギ・フューセレシュ カベルネ・ソーヴィニヨン
オラスリズリング メルロ
フルミント ツヴァイゲルト
シャルドネ カベルネ・フラン
ミュラートゥルガウ ピノ・ノワール
ハールシュレヴェリュ ポルトギーザー
スルケバラート ブラウブルガー
アレッタ カダルカ
イルシャイ・オリヴェール シラー

ワイン法と品質分類

 2009年8月1日から発効した新しいEU規則にのっとり、ハンガリーワインは2011年から「原産地呼称保護PDO:Protected Designation of Origin)ワイン」 (EU、フランスでは“A.O.P"、イタリア、スペインでは“D.O.P"、ハンガリー語は“OEM")と「地理的表示保護(PGI:Protected Geographical lndication) ワイン(ヨーロッパでは“I.G.P"、ハンンガリー語は“O.F.J")に分類されるようになりました。
「地理的表示なしワイン」はハンガリー語で“FN"。 *以前のアスタル・ボル(テーブルワイン)他の等級は現在使用されていない。